ネットワークプロデューサーは現住所。本籍地はもちろんエンジニア。

なんだ、学生気分のままじゃないか、いまも。
「こんなことができたらいいなあ」と頭の中で考えていたことが実際に形になる喜び。ネットワークを作り上げていく過程で仲間たちが味わう技術者としての喜び。でき上がったネットワークを利用する人、つまりお客様たちの喜び。
「私がプロデューサーという役を務めることで、たくさんの人たちに喜びを提供できる。それが今、自己を表現する手段として、自分には一番向いているなあって思ったんです」
あたかもジグソーパズルのワンピースのようにピッタリとはまる。そんな「居心地のいい場所」を都筑は手に入れることができた。

都筑純ここで都筑が手がけた仕事をひとつ紹介しよう。わが国のある研究機関向けに開発された研究観測用ネットワークである。これは国内の観測所から送られてきた地震の観測データを、一元的に処理、管理する巨大なネットワークである。プロジェクトの途中からメンバになったものの、もちろん都筑が、企画提案から設計、構築、運用企画まで、トータルにプロデューサー役を務めた。ところが都筑は、大役を果たしたにも関わらず、実にあっさりとこんなことを言う。
「人を集めてチームを組んで、目的に向かって全体をまとめていく。結局、私がNTT-ATで今やっているのも、学生時代の草の根ネットの頃と同じ事なんです。違うのは2億円、3億円という大きなお金が動いていること、関わっている人の数が増えたこと、そして技術的にレベルが高くなっていること。やっていることは本質的に変わってないんです。時々、ふと我に返って『なんだ、学生気分のままじゃないか、おれ』って、あきれる事もあります」

最後にひとつ、質問。「あなたはほんとうに技術者なのですか?」と問うと、都筑は急に真剣な表情になり、きっぱりと語った。
「技術者として専門の分野を、集中してとことん突き詰めてみたいという気持ちは確かにあります。でも、いまはこのプロデューサーという役回りが面白いんです。ただ、何年後になるかは分かりませんが、きっと必ずエンジニアのフィールドに帰るでしょうね。だから、ネットワーク・プロデューサーはあくまでも現住所。本籍地はエンジニアなんです」
都筑もやはりNTT-ATの技術者の系譜に連なる一人なのであった。■


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都筑純